海南島(海南省)の万人坑
北 岸 郷 「 五 百 人 碑 」

 北岸郷「五百人碑」
海南省琼海市

 1941年6月24日の深夜から25日にかけて、海南島東部に位置する北岸郷など近隣の四つの村を、共産党員の掃討を続ける日本軍が同時に襲撃する。
 当時の北岸郷は25戸・130人が暮らす農村だが、この襲撃から逃げ遅れた82人が日本兵に囲まれ、そのうち77人が殺害される。その中の一人・黄英梅さんは、大勢の人たちの前で七人の日本兵に強姦されたあと殺される。また、黄君梅さんと黄君超さんは拉致され性奴隷にされた。さらに、家屋19戸が焼かれ32戸は破壊される。同時に、牛16頭が殺された。
 北岸郷を含む近隣の四つの村で日本軍が引き起こした一連の虐殺事件により全体で499人が殺害された。近隣の四つの村の人たちは北岸郷に「五百人碑」(記念碑)を建立し、犠牲者を追悼している。

写真:2014年11月16日撮影 


 海南島地図(位置)
 海南島は、中国本土(大陸)の南方に浮かぶ巨大な島。面積は3.4万平方キロで、台湾(3.6万平方キロ)よりほんの少しだけ狭い。ベトナムのハノイより南に位置し、南側は熱帯気候に属するこの島に37民族・870万人が暮らす。そのうち720万人が漢族で、残りの150万人が黎族・ミャオ族・回族などの少数民族。一年中緑に覆われる温暖なこの島に11月から3月にかけて大陸からたくさんの人がやって来て暖かい冬を過ごす。

 海南島地図
 北岸郷は海南島の東部にある琼海市に属する農村。アジアフォーラムが毎年開催されるボアオから車で30分ほどで行ける。

 北岸郷「五百人碑」
 北岸郷の集落から少し離れたところにある広大な水田のただ中に、犠牲者を追悼する記念碑・「五百人碑」が建立されている。

 北岸郷「五百人碑」
 「五百人碑」の前で、虐殺を免れた幸存者の何君範さんと何書琼さんから、1941年6月の惨殺事件の体験を聞く。

 犠牲者追悼式
 「五百人碑」の正面に花を供え、犠牲者を追悼する言葉と不再戦を誓う決意を野津喜美子さんが中国語で読み上げる。

 犠牲者追悼式
 どれだけ謝罪しても惨劇の事実は消えないし、過去を取り戻すこともできない。私たちがすべきことは、日本人に二度と侵略をさせないことだ。

 幸存者の何君範さん
 北岸郷で一旦は日本兵に取り囲まれながら虐殺を免れた五名のうちの一人が何君範さん(左)。1934年生まれで、六歳半の時に惨劇に巻き込まれた。何君範さんが話す生活語(「方言」)は、海南島で生まれ育った陳明柳さん(右=通訳)にも分かりづらいところがある。

 幸存者の何君範さん
 日本軍による惨殺事件で何君範さんは家族六人(母・姉・妹・弟・兄嫁・おば)を殺される。自身も顔(ほほ)と腹と背を刺されたが、命だけはとりとめた。陳明柳さんは何君範さんの話を、泣きながら時に号泣しながら必死に通訳してくれる。

 幸存者の何書琼さん
 近くの別の村で事件に巻き込まれた何書琼さん(左)。あの惨殺事件で家族七人を殺され、当時五歳だった何書琼さんは一人だけ残される。自身も四カ所(頭・胸・手・足)を刺されるが、虐殺だけは免れた。

 幸存者の何書琼さん
 「母は刺されながら私をかばってくれたが、私も刺されて気を失なう。そして、気づいたら辺りは血の海だ。他の人から逃げろと言われ私は逃げるが、母も姉も動かなかった」。淡々と語る何書琼さんの話を覃啓傑さん(右)が泣きながら通訳してくれる。

 中国は正義をゆずらない
 何君範さん(右端)の隣は北岸郷共産党委員会の黎書記。「日本の安倍の歴史歪曲はひどい。今の中国は昔の弱い中国ではない。中国は正義をゆずらない」と話す何書琼さん(左端)の言葉に黎書記もうなずく。

 「五百人碑」にて
 左から順に、何書琼さん・黎書記・何君範さん。惨劇の体験を淡々と話すことができるようになるまでにどれほどの年月を過ごし、どれほどの涙を流してきたのだろう・・・・・・。




「万人坑を知る旅」index

「 満 州 国 」 の 万 人 坑
 内蒙古自治区 ハイラル要塞万人坑
 黒龍江省   鶴崗炭鉱万人坑  鶏西炭鉱万人坑  東寧要塞万人坑
 吉林省    豊満ダム万人坑  遼源炭鉱万人坑  石人血泪山万人坑
 遼寧省    北票炭鉱万人坑  阜新炭鉱万人坑  本渓炭鉱鉄鉱万人坑  弓長嶺鉄鉱万人坑
        大石橋マグネサイト鉱山万人坑  大石橋マグネサイト鉱山万人坑(2)
        金州龍王廟万人坑  新賓北山万人坑  撫順炭鉱万人坑  旅順万忠墓
        阜新炭鉱万人坑(2)  北票炭鉱万人坑(2)  平頂山惨案
 河北省(旧熱河省) 承徳水泉溝万人坑

華 北 の 万 人 坑
 河北省    宣化龍煙鉄鉱万人坑  潘家峪惨案  石家庄強制収容所  井陉炭鉱万人坑
 山西省    大同炭鉱万人坑  大同炭鉱万人坑(2)
 天津市    塘沽強制収容所

華 中 ・ 華 東 の 万 人 坑
 安徽省    淮南炭鉱万人坑
 江蘇省南京市 南京江東門万人坑  南京上新河万人坑  南京普徳寺万人坑  南京東郊合葬地
 上海市    銭家草惨案

華 南 の 万 人 坑
 湖南省    廠窖惨案(廠窖大虐殺)
 海南省    八所港万人坑  石碌鉄鉱万人坑  田独鉱山万人坑  陵水后石村万人坑
        南丁(朝鮮村)千人坑  月塘村「三・二一惨案」  北岸郷「五百人碑」


付 録 : 朝 鮮 を 知 る 旅
        朝鮮の人たちの日常 2014年

付 録 : 日中友好新聞連載記事
        中国本土に現存する万人坑と強制労働現場を訪ねる



 注意:無断引用・転載はお断りします。引用・転載などを希望される方は、下のメールフォームをとおして、当ホームページの担当者に相談してください。


お知らせのページ

行事案内やニュースなどを不定期に追加・更新します。
時々覗いてみてください。


御 案 内
「中国人強制連行・強制労働と万人坑」の学習会をしませんか!

 中国に現存する万人坑(人捨て場)と、万人坑から見えてくる中国人強制連行・強制労働について考えてみませんか!
 「中国人強制連行・強制労働と万人坑」について事実を確認してみたい、学習会や集会をやってみたいと思われる方は、当ホームページ担当者に気軽に連絡・相談してください。日程や条件が折り合えばどこへでも出向き、話題と資料を提供し、できる限りの解説をします。仲間内の少人数の勉強会とか雑談会のような場でもよいですし、不特定の一般の方も参加していただく集会のような形式でもよいです。開催形式・要領は依頼者にお任せします。まずは当方に連絡していただき、進め方などを相談しましょう。
 それで、謝礼などは一切不要ですが、資料の印刷と担当者の会場までの交通費実費だけは、依頼される方で負担してくださいね。
 当方への連絡は、メールフォームまたは下記メール宛でお願いします。
   ⇒ メールアドレス:

青木 茂 著書の紹介


 差し支えなければ、感想、ご意見等をお送りください。
メールフォームのページへ