廠窖惨案(廠窖大虐殺) 湖南省益陽市南県. 江南殲滅作戦 アメリカとイギリスに宣戦布告し太平洋の広大な領域に戦線を拡大した日本は、兵力を南方に移動させる必要が生じるが、輸送船の確保に苦慮する。そこで、中国側から獲得し宜昌に係留していた十数隻の船舶も活用することになる。この船舶を宜昌から長江下流の漢口方面へ運航する際の安全確保と、長江右岸地方に勢力を拡大している中国軍の殲滅を目的として、一九四三年五月五日から六月一〇日にかけて江南殲滅作戦が実施された。 廠窖惨案(廠窖大虐殺) その江南殲滅作戦の第一期に、湖南省北東部にある洞庭湖の北辺に位置する廠窖で引き起こされた事件が廠窖惨案(廠窖大虐殺)であり、一九四三年五月九日から一一日までの三日間で中国の軍民三万人余が殺害された。その犠牲者の内訳は、中国軍敗残兵五〇〇〇人、地元住民七〇〇〇人、近郊住民六〇〇〇人、他地域からの避難民一万二〇〇〇人である。その他に、負傷者三〇〇〇人、焼失家屋三〇〇〇間(部屋)余、焼失舟艇二五〇〇艘余、強姦された女性二〇〇〇人以上などの被害が発生した。 大虐殺事件現場の湖南省益陽市南県廠窖鎮には、避難民が乗る多数の船舶が爆撃され大量の犠牲者の血で水が赤く染まったといわれる血水河遺跡や、大量の遺骨が発見された千人坑遺跡などが残されている。また、国家考古学者らによる遺骨の発掘調査は今も続けられている。 廠窖惨案遇難同胞記念館 その惨案の地に、一九八六年に廠窖惨案遇難同胞記念碑が建立され、二〇一〇年八月一五日に廠窖惨案遇難同胞記念館が開館した。この新しい記念館は相当に立派な施設だが、公的な施設ではなく、事件の研究者らが発案し民間人の協力で建設され運営されているところが興味深い。 写真:2016年10月21日撮影 . |
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廠窖惨案遇難同胞記念碑 一九八六年に建立された廠窖惨案遇難同胞記念碑。一九・四三メートルの記念碑の高さは惨案発生年の一九四三年を意味し、五・九メートルの台座の高さは惨案第一日目の五月九日を示している。 |
廠窖惨案幸存者との会食 廠窖惨案のただ中に巻き込まれながら幸運にも虐殺を免れた幸存者の方々との会食。左から、張春秀さん(九二歳)・全伯安さん(九一歳)・郭鹿萍さん(九二歳)・彭奇さん(八七歳)。右端は通訳の李衛雄さん。 |
廠窖惨案遇難同胞記念館 廠窖惨案遇難同胞記念館は二〇一〇年に記念碑の隣に建設され、同年八月一五日に開館した。 | 廠窖惨案遇難同胞記念館 廠窖惨案遇難同胞記念館は相当に立派な施設だが、公的な施設ではなく、民間人により建設され運営されている。 |
廠窖惨案遇難同胞記念館内の展示室 | 廠窖惨案遇難同胞記念館内の展示室 |
廠窖惨案遇難同胞記念館内の展示写真 廠窖惨案遺跡一号坑発掘現場における発掘作業の様子が写真で紹介されている。 | 廠窖惨案遇難同胞記念館内の展示 廠窖惨案遺跡発掘現場の状況が再現され展示されている。 |
幸存者から証言を聞く 張春秀さん(九二歳・左端)と通訳の李衛雄さん(中央)。右端は記念館職員の黄啓林さん。幸存者の話が分かりにくいと、黄啓林さんが分かりやすく補足し説明してくれる。 | 幸存者から証言を聞く 張春秀さん(九二歳・右)と彭奇さん(八七歳・左)。惨案時に張春秀さんは一九歳。「女性は日本兵に強姦されるので、顔に泥をぬり女性だと分からないようにした」。 |
幸存者から証言を聞く 彭奇さん(八七歳・右)と黄啓林さん。彭奇さんは一三歳の時に惨案に遭遇した。「中華大院にいた十数人の女性を日本兵が強姦した。そのあと、女性を大院に閉じ込めたまま日本兵は大院に火を放ち女性を殺害した」。 | 幸存者から証言を聞く 郭鹿萍さん(九二歳・右)と黄啓林さん。三十数名の男性と共に郭鹿萍さんも縄で縛られ、他の男性は日本兵により銃砲と刀剣で次々に殺害された。 |
幸存者から証言を聞く 郭鹿萍さん(九二歳)を襲った銃弾は郭さんの心臓の脇を貫通し、刀剣で腹を四回、肩を四回刺された。郭さんの全身に一六カ所の傷跡が残る。 | 幸存者から証言を聞く 郭鹿萍さん(右・後ろ向き)と黄啓林さん。郭さんの意識が回復すると周りは血の海で、死体がたくさんころがっていた。郭さんを縛った縄を自分で外したが、どうやって外したのか郭さんは憶えていない。 |
幸存者から証言を聞く 全伯安さん(九一歳・中央)と黄啓林さん(左)と李衛雄さん(右)。「日本兵は、老人も幼児も女性も手当たりしだい殺害した」。 | 幸存者から証言を聞く 全伯安さん(九一歳・右)。「日本人に事実を伝えてほしい。惨劇を再び引き起こしてはならない」。 |
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