海南島(海南省)の万人坑
南 丁( 朝 鮮 村 )千 人 坑

 南丁(朝鮮村)千人坑
海南省三亜市吉陽鎮

 1942年に日本は、「政治犯」1000人以上を朝鮮半島から海南島南部の南丁に連行し、道路建設工事などに徴用する。そして、過酷な強制労働で多くの朝鮮人を過労死・衰弱死させるとともに、見せしめのため懲罰という名目で多数を残忍に殺害する。さらに、最後まで生き残っていた朝鮮人も1945年の敗戦時に集団虐殺されてしまう。南丁で命を落とした朝鮮人らは1000人を超え、これらの犠牲者の遺体が埋められ南丁千人坑(人捨て場)が形成された。
 南丁の惨劇は人知れず闇に埋もれてしまう恐れもあったが、実は、敗戦時の集団虐殺を逃れ朝鮮に帰ることができた人が一人だけいて、その一人により南丁の惨劇は朝鮮の人たちに伝えられた。
 1998年にKBC(韓国放送局)が南丁千人坑を取材し、南丁朝鮮村の惨劇と現場に多数の遺骨が残されていることが報道される。その翌年の1999年に、南丁千人坑の現場に朝鮮人遺骨館が建てられ、犠牲者の遺骨は一体ずつ骨壺に入れて遺骨館に安置された。この時に、朝鮮語と中国語の二基の記念碑も併せて建立された。
 現在の南丁村には黎族を主体に3000人が住み、村の小学生は社会見学の一環で教師に引率されて南丁千人坑にやってくる。日本の侵略を直接体験し当時の情況を知っている人は今では南丁に一人しかいないが、その人も話すことができなくなっている。

写真:2014年11月14日撮影 


 海南島地図(位置)
 海南島は、中国本土(大陸)の南方に浮かぶ巨大な島。面積は3.4万平方キロで、台湾(3.6万平方キロ)よりほんの少しだけ狭い。ベトナムのハノイより南に位置し、南側は熱帯気候に属するこの島に37民族・870万人が暮らす。そのうち720万人が漢族で、残りの150万人が黎族・ミャオ族・回族などの少数民族。一年中緑に覆われる温暖なこの島に11月から3月にかけて大陸からたくさんの人がやって来て暖かい冬を過ごす。

 海南島地図
 南丁千人坑は、海南島南部の中心都市・三亜の近くにある。

 南丁(朝鮮村)千人坑
 この辺りは、朝鮮人犠牲者の遺体(遺骨)が埋められていたところ。記念碑など四基の石碑が設置され、南丁の惨劇を伝えている。画面右端の樹林の奥に、犠牲者の遺骨を安置している朝鮮人遺骨館がある。

 南丁千人坑記念碑
 1999年に設置された二基の記念碑。左側は中国語で、右側は朝鮮語で惨劇の事実が刻まれている。

 南丁千人坑
 二基の記念碑の奥に朝鮮人遺骨館の壁が見える。日本敗戦時の集団虐殺から一人だけ逃れることができた人が朝鮮に帰り、南丁の惨劇が朝鮮の人たちに知られることになった。

 犠牲者追悼式
 記念碑の前に花と色紙を供え、犠牲者を追悼する言葉を中国語で読み上げる。色紙には、不戦・平和の誓いを記している。

 南丁の惨劇を伝える
 蒲学輝さん(左)は地元の人。私たちを千人坑に案内し、おじいさん・おばあさんから聞いた南丁の惨劇を話してくれる。右側は通訳兼ガイドの陳明柳さん。海南島海口市在住の陳さんは、大陸の中国人が理解できない海南島の生活語(方言)を理解できるので、とても有難い。

 朝鮮人遺骨館と豆畑
 千人坑の敷地で地元の人が豆を栽培している。この時も地元の女性が豆を収穫している。画面の奥にあるのが朝鮮人遺骨館。

 朝鮮人遺骨館
 1998年にKBC(韓国放送局)が南丁千人坑を取材・報道し、南丁の惨劇が韓国の多くの人に知られることになる。翌1999年に犠牲者の遺骨が収集され、一体ずつ骨壺に入れて朝鮮人遺骨館に安置された。

 朝鮮人遺骨館
 犠牲者が埋められた当時のままの五体そろった状態で収集された遺骨が五基の透明容器に収納され保管された。

 朝鮮人遺骨館
 千人坑から収集され遺骨館に安置・保管された犠牲者の遺骨は、いろいろな人により大量に盗み取られている。五体そろった遺骨が収納されていた透明の容器にも遺骨はほとんど残っていない。遺族や関係者が賠償を考慮し持ち去ることもあるそうだ。

 朝鮮人遺骨館
 遺骨は一体ずつ分けてこの骨壺に入れて安置された。かなりの遺骨が盗み取られているということだが、骨壺の蓋を開けて中を確認することははばかられた。




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