阜新炭鉱万人坑 ⇒阜新炭鉱万人坑(2) 遼寧省阜新市. 阜新炭鉱万人坑と阜新煤炭博物館は、阜新市郊外のなだらかな丘陵の上にあり、博物館の正門を背に丘陵の下を見下ろすと広い平地(盆地)が広がり、阜新市の住宅街や工場などが見える。 阜新炭鉱万人坑の全体像について、李秉剛氏の「万人坑を知る」(東北大学出版社=瀋陽)で確認しておこう(要旨)。 『一九三三年に熱河省を占領した日本は、一九三六年一〇月に満州炭鉱株式会社阜新鉱業所を設立し、阜新の石炭を大規模に搾取し始める。一九三六年から一九四五年八月までに二五二八万トンの石炭を収奪し、七万人の中国人を死亡させた。そして、新邱・興隆溝・城南・五龍南溝・孫家湾などに満炭墓地という名の大規模な万人坑が作られた。』 写真撮影(2009年9月26日)と解説 青木 茂 . |
阜新煤炭博物館中央広場 阜新煤炭博物館の正門から構内に入ると五〇メートル四方くらいの広場があり、新しい石碑が広場中央に設置してある。石碑には、「全国重点文物保護単位/阜新万人坑/中華人民共和国国務院/二〇〇六年五月十五日公布/遼寧省人民政府立」と刻まれている。 広場を囲むように、四棟ほどの赤煉瓦造りの平屋の建物が建っていて、事務所や資料室や職員宿舎として使われている。広場をはさんで正面に小高い丘があり、緩い傾斜の長い階段の先の丘の頂上に高さが一〇メートルくらいはある大きな記念碑が建っている。記念碑には「日偽蒋匪統治時期死難鉱工記念碑」と刻まれている。 |
満炭墓地 記念碑のある博物館中心部施設の周囲の丘陵は基本的に草原だが、適当に間隔をあけ後から植林された樹木が数メートルの高さに育っているところもある。そして、この草原全体が阜新炭鉱万人坑だ。遺体を埋めたときの土饅頭が延々と続いているのが分かる。当初は遺体を一体一体埋葬していたとのことで、遺体埋葬を指示された中国人が、日本人の酷い仕打ちに怒りながら、同胞の遺体を丁重に埋葬していったのだろう。 草原の土饅頭の中に、高さ一メートル半ほどの四角柱状の白っぽい石碑が立っていて、「満炭墓地」と刻まれている。墓石が立っているという感じだ。「満炭墓地」と刻まれた石碑はこの周辺に四つあるとのことだ。 | 死難鉱工遺骨館/建物外観 遺骨の発掘現場をそっくり保存する大きな建物で、入口正面に「死難鉱工遺骨館」と記された大きな表示板が掲げられている。 |
死難鉱工遺骨館の中には、幅五メートル・長さ一五メートルくらいの遺骨発掘現場二ヶ所が保存され「展示」されている。ゆるやかな斜面の上側を頭にして数十センチの間隔で基本的には整然と遺骨が並べられている。 |
死難鉱工遺骨館/遺骨発掘現場詳細 死亡した中国人の遺体は最初は一体ずつ個別に埋葬し、それぞれ土饅頭を盛られたが、やがて遺体をくっつけ並べて埋葬するようになる。この発掘現場は、詰めて並べて埋葬されるようになった後の現場だ。一〇メートルそこそこのわずかな場所に何十体もの遺骨が横たわる情景は異様と表現するしかない。 そして、周辺の丘陵全体がこの発掘現場と同じ状態であることを見落としてはいけない。発掘されていないので直接見ることはできないが、丘陵全体が阜新炭鉱で殺された人たちの遺体捨て場であり、今も遺骨が埋まっている。 |
抗暴青工遺骨館 大部分が捕虜の兵士である「特殊労働者」は一九四五年までに九三〇〇人余が阜新炭鉱に連行されている。そのうち、一九四二年八月二五日に連行されてきた三〇〇人以上の「特殊労働者」が九月早々に集団で脱走を試み、一部は逃げ出すことができたが多くが射殺され、二〇〇名余が再び捕まえられた。そして、更に酷い虐待を受け、死んだ人も生きたままの人もまとめて埋められた。その現場を、幅一〇メートル・奥行き二〇メートル程度の平屋の建物で覆い、抗暴青工遺骨館(暴力に抵抗した青年工の遺骨館)として保存している。 | 抗暴青工遺骨館/詳細 幅二メートル・長さ二〇メートルくらいのガラスの囲いの中に、埋められた状態のままの遺骨の発掘現場が保存されている。そこに遺骨が何層にも折り重なり、満員電車の乗客をそのまま土の中に埋めたような状態で捨てられている。頭から足まで全身を確認できる遺骨がびっしりと累々と横たわっていて、下あごも含め頭部全体がそっくり残り、上下とも歯並びがしっかりしている遺骨が多い。そのどれもが口を少し開け苦しそうにしているように見える。 |
阜新炭鉱坑内で、把頭(現場監督)の監視の下で採炭作業を行なう労工 【李秉剛教授(北京)提供写真】
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死体置き場(倉庫)から救出された労工・張懐善さん 【李秉剛教授(北京)提供写真】
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張順廷さんに傷を負わせた日本人現場監督・陶山の金槌(かなづち) 【李秉剛教授(北京)提供写真】
| 孫家湾南山満炭墓地では、毎年秋になると、死亡する労工を埋葬するおびただしい数の墓穴が掘られた。 【李秉剛教授(北京)提供写真】
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阜新孫家湾南山万人坑の一部。真ん中に、外に向かって這い出そうとしている状態の遺骨がある。生きたまま埋められた労工だ。 【李秉剛教授(北京)提供写真】
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