海南島(海南省)の万人坑
月塘村「三・二一惨案」

 月塘村「三・二一惨案」
海南省万寧市

 「三・二一惨案」(1945年)当時の月塘村では、100戸・600人が主に農業で暮らしていた。
 その月塘村を1945年5月2日(旧暦3月21日)未明に日本海軍佐世保第八陸戦隊万寧守備隊が襲撃し、194名(月塘村民190名と村外の4名)を虐殺する。この惨殺事件では、生後間もない赤ん坊も高齢の老人も出産が間近い妊婦も手当たりしだいに殺された。さらに33名が負傷し、死傷者は合わせて227名になる。また、三十数戸の家屋が焼かれ、牛やブタ十数頭のほか、食料や衣服も大量に奪われた。
 「三・二一惨案」は月塘村に癒えることのない傷跡を残し、村の人々は惨殺事件を語り継ぎ、犠牲者の追悼を続けている。事件から六十年余を経た2007年には、事件のあらましと犠牲者の名前を刻む「三・二一惨案」記念碑が新たに建立される。そして、新しい記念碑の前に村中の人が集まり犠牲者を追悼し、事件への想いを新たにする。
 「三・二一惨案」で傷を負った33名のうち14名は今も健在である。

写真:2014年11月15日撮影 


 海南島地図(位置)
 海南島は、中国本土(大陸)の南方に浮かぶ巨大な島。面積は3.4万平方キロで、台湾(3.6万平方キロ)よりほんの少しだけ狭い。ベトナムのハノイより南に位置し、南側は熱帯気候に属するこの島に37民族・870万人が暮らす。そのうち720万人が漢族で、残りの150万人が黎族・ミャオ族・回族などの少数民族。一年中緑に覆われる温暖なこの島に11月から3月にかけて大陸からたくさんの人がやって来て暖かい冬を過ごす。

 海南島地図
 万寧月塘村は海南島の東部にある。アジアフォーラムが毎年開催されるボアオから車で50分弱で行ける。

 三・二一惨案記念碑
 月塘村の集落内にある三・二一惨案記念碑を確認する。バイクでやって来た村の若者は、日本人が辺りの状況を確認したり犠牲者追悼式を行なうのを見ている。そして、このあと、日本の暴虐に対しやるかたない怒りを爆発させることになる。

 三・二一惨案記念碑
 2007年に建立された三・二一惨案記念碑。虐殺事件のあらましと犠牲者の名前を刻む文字は、鮮烈な赤色に塗られている。記念碑の建設資金は日本人が寄付している。

 犠牲者追悼式
 犠牲者追悼の言葉と不戦の決意を記す色紙と花を三・二一惨案記念碑に供へ、野津喜美子さんが追悼の言葉を中国語で読み上げる。

 犠牲者追悼式
 三・二一惨案(惨殺事件)のあと雨が降り、犠牲者の鮮血が村中から池に流れ込む。そして、池全体が血の色に染まる。

 月塘村の子どもたち
 三・二一惨案記念碑の前で外国人(日本人)がうろうろしているのに気付いた子どもたちが集まってくる。この子どもたちに悲しい想いを二度とさせてはならない。

 月塘村の子どもたち
 月塘村共産党委員会の事務所の入口にて。この事務所の二階で、三・二一惨案(惨殺事件)の幸存者(生存者)が惨劇のようすを話してくれる。

 三・二一惨案幸存者(生存者)の証言を聞く
 左から順に、覃啓傑さん(通訳)・朱小平さん・朱西栄さん・朱振華さん・朱建華さん・朱進春さん。月塘村共産党委員会事務所の会議室にて。

 幸存者の朱進春さん
 祖父・祖母・父・母・弟・おじ(父の兄)・おじの妻・おじの子。三・二一惨案で、九人家族のうち八人を殺された。日本兵は四歳の弟を放り投げ、下から銃剣で突き刺した。弟が殺されるのを見たら胸が・・・・・・。当時九歳だった私は一人だけ残される。私自身も八カ所を刺され、銃弾が背から腹に貫通した。

 幸存者の朱建華さん
 三・二一惨案当時は生後八カ月。惨殺事件のことは母から聞いた。兄は銃剣を背から腹に突き刺され殺された。いとこ四人とおばも殺された。母は三カ所を刺されたが、命だけは助かった。私自身も四カ所を刺されたが、命だけはとりとめた。しかし、身体に傷跡が今も残っている。

 月塘村三・二一惨案の証言者と共に
 左から順に、野津喜美子さん・李秉剛さん・朱学基さん・朱進春さん・朱建華さん・野津加代子さん。朱学基さんは、三・二一惨案(惨殺事件)の全体像を詳しく説明してくれた。




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