大石橋マグネサイト鉱山万人坑

 大石橋マグネサイト鉱山万人坑
遼寧省大石橋市

 両側をなだらかな山に囲まれる、幅が数百メートルから一キロくらいありそうな盆地状の細長い平地の中に大石橋虎石溝万人坑記念館がある。万人坑が形成された当時は、人里離れた山の中だったと思われるが、現在(2009年)では鉱山関係の工場などが近辺に林立している。
 大石橋万人坑の全体像について、李秉剛氏の「万人坑を知る」(東北大学出版社=瀋陽)で確認しておこう(要旨)。
 『一九一七年二月に日本人は、大石橋のマグネサイト採掘権を獲得し収奪を始める。一九三一年から一九四五年までにマグネサイト鉱石四四〇万トンを搾取し、一万七〇〇〇人以上の中国人を死亡させた。死者の大部分は虎石溝・馬蹄溝・高荘屯に埋められ、三つの万人坑が形成された。このうち虎石溝は一九六〇年代に発掘され、万人坑記念館が建てられた。しかし、馬蹄溝と高荘屯はまだ発掘されていない。』

写真撮影(2009年9月27日)と解説 青木 茂

大石橋マグネサイト鉱山
 遼寧省南部の大石橋地区は、世界でも有数のマグネサイト鉱山があり、露天掘りもできる。万人坑記念館に至る道路の両側にも、マグネサイト鉱石を処理する工場など鉱山関係の建物がたくさん建ち並び、その先の両側の山々が露天掘りのマグネサイト鉱山だ。人工的に削り取られた岩肌の山が延々と続く。

大石橋市虎石溝万人坑記念館
 工事中の道路の脇に、周囲の様子と不釣合いな真新しい近代的な建物がある。新しく建て直された大石橋市虎石溝萬人坑記念館だ。虎石溝記念館は、マグネサイト鉱山などの強制労働で死亡した中国人をまとめて捨てて埋めた現場の一部を保存・展示する施設で、最初の記念館は一九六〇年代に建てられた。そして、二〇〇五年から二〇〇六年にかけ増改築され、新しい記念館として二〇〇六年に開館している。

記念館/資料室
 新しい記念館は、以前の記念館に比べ随分と拡張されている。まず、以前は無かった資料室が入口側に設置され、幅二〇メートル・奥行き一〇メートルくらいの部屋の壁に、解説のパネルや写真がびっしり掲示されている。当時の労工の写真も掲示されているが、そこに写っている人で現在存命の人がいる。幾つか設置された展示台には、労工を苦しめた刑具や拷問の道具なども展示されている。

万人坑発掘現場
 資料室の奥に、万人坑の発掘現場の一画が、労工が埋められた当時のまま保存・展示されている。保存されているのは、旧記念館で保存・展示されていた一四〇平方メートルの長方形の発掘現場で、深さ三メートル、七層に重なる一七四体の遺骨がここにある。

万人坑発掘現場/労工の遺骨
 頭に穴のある遺骨や骨に傷のある遺骨は、道具で殴られた人のものだ。口を開けているのは、生きたまま埋められた人の遺骨だ。こんな説明を李秉剛教授がしてくれる。

万人坑発掘現場/労工の遺骨

万人坑発掘現場/労工の遺骨

新記念館増設部分/労工の遺骨
 旧記念館は、一四〇平方メートルの発掘現場を保存するだけの小さな建物だった。一方、新記念館では、発掘現場の隣に同程度の広さの遺骨置き場が新設され、別の場所で収集された七〇体ほどの遺骨がここに移され、五列に整然と並べ展示されている。
 虎石溝記念館は営口市の愛国主義教育基地に指定されていて、年に数千人の来館者がある。近隣からの人が多いが、遠方から来る人もいる。日本人の訪問者も年に数十人くらいはある。



 大石橋虎石溝万人坑:頭部を撃ち抜かれ死亡した労工の頭骨
【李秉剛教授(北京)提供写真】

 大石橋マグネサイト鉱万人坑:生き埋めにされた労工
【李秉剛教授(北京)提供写真】
 大石橋虎石溝万人坑:生き埋めにされた労工
【李秉剛教授(北京)提供写真】

 大石橋マグネサイト鉱山で生き残った労工。歴史の証人・許殿波さん。
【李秉剛教授(北京)提供写真】




「万人坑を知る旅」index

「 満 州 国 」 の 万 人 坑
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付 録 : 朝 鮮 を 知 る 旅
        朝鮮の人たちの日常 2014年

付 録 : 日中友好新聞連載記事
        中国本土に現存する万人坑と強制労働現場を訪ねる



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