本渓炭鉱鉄鉱万人坑 遼寧省本渓市. 本渓には主要な万人坑が六ヶ所あり、そのうちきちんと保存されているのは二ヶ所で、他の四ヶ所はきちんと保存されていない。本渓万人坑の一つ・本渓湖炭鉱仕人溝万人坑は、本渓市(盆地)の端近くにある本渓湖駅の背後にひろがる緑豊かな山の中にある。 本渓炭鉱鉄鉱万人坑の全体像について、李秉剛氏の「万人坑を知る」(東北大学出版社=瀋陽)で確認しておこう(要旨)。 『日露戦争が終わった一九〇五年から日本は本渓に入り本渓湖煤鉄公司を設立し、四〇年間に、石炭二〇〇〇万トン・海綿鉄七〇〇〇トン・特殊鋼一万七〇〇〇トンを収奪した。その間に中国人労工を多数死亡させた。一九〇五年から一九三一年までの死者数は本渓煤鉄公司で二八三七人、一九三一年から一九四五年までの死者数は本渓湖炭鉱で約一〇万人、本渓南芬廟児溝鉄鉱は約一万七八〇〇人、第一工場建設中が約一万四〇〇〇人で、合計死者数は約一三万五〇〇〇人である。これらの遺体が捨てられ大規模な万人坑が六ヶ所作られた。それは、仕人溝・柳塘南天門・大平溝・月牙嶺矸石山・本渓製鉄所第一工場・南芬廟児溝である。』 写真撮影(2009年9月28日)と解説 青木 茂 . | |
本渓湖駅裏手の山 本渓湖駅の裏手から山道を歩いて登る。本渓湖盆地の山際まで新しい高層ビルが建ち並んでいるのが分かる。中国の各都市の発展はめざましい。 |
本渓湖駅裏手の山 |
肉丘墳/本渓湖炭鉱仕人溝万人坑 肉丘墳は、一九四二年四月二六日の本渓湖炭鉱のガス爆発事故で死んだ人の集団墓地で、日本人が建てた高さ三メートルほどの記念碑が石段の上部にあり、記念碑の正面に日本語で「永劫不朽殉職産業戦士之碑」と刻まれている。高さ三メートルほどの石段の手前の向かって左側に、「市級文物保護単位/肉丘墳/渓湖区人民政府/二〇〇〇年六月」と彫られた黒い石碑が設置されている。 |
肉丘墳/本渓湖炭鉱仕人溝万人坑 石段手前右側には「愛国主義教育基地/中共渓湖区委渓湖区人民政府/二〇〇〇年六月」と刻まれた黒い石碑が設置されている。 一九四二年四月二六日の本渓湖炭鉱のガス爆発事故では坑内に火災が発生し、日本人の採炭所長が坑内への送風を中止し入口を閉鎖したので、多くの労工が坑内に閉じ込められ窒息死した。現場の労工の話では、三〇〇〇人以上が死亡したとされている。 犠牲者は、山の中の仕人溝に掘られた長さ八〇メートル・幅八〇メートル・面積六四〇〇平方メートルの穴に埋められた。その際、傷の無い遺体は棺に入れ、穴の周囲の壁に沿って五重に積み上げ、バラバラになった遺体は穴の中央部に入れられた。こうして犠牲者が埋められているのが肉丘墳だ。数千人が死んだ事故に対する世論の非難を避けるため日本人管理者は記念碑を建て、殉難者は一三二七人だけと記した。 |
本渓湖炭鉱事務所 肉丘墳のある山のすぐ下にある本鋼電気有限責任公司は元は日本の炭鉱事務所だったところで、正面の門の近くにある赤煉瓦造りの二階建ての建物の壁に銘板が貼り付けてあり、次のように記されている。「保護建築/渓湖紅楼は一九一二年に建てられた。元は本渓湖煤鉄事務所で、日本の中国侵略と本渓鉱産物資源略奪の証拠である。/本渓市人民政府/二〇〇一年九月」。 |
本渓湖鉄道駅 本渓湖煤鉄事務所の目の前の橋を渡ってすぐのところに本渓湖駅がある。昔からある古い駅舎は三〇メートルくらいの長さで、東京駅を小さくして一階建てにしたような感じの造りで、歴史を感じさせる建物だ。壁に貼り付けてある銘板に次のように記されている。「保護建築/本渓湖鉄道駅は一九三四年に建てられた。本渓鉄道で最も早く設置された駅の一つである」。この駅から、膨大な量の石炭や鉄鉱石が送り出されていったのだろう。 |
本渓水洞(本渓鍾乳洞)入口 本渓市は、瀋陽の南南東六〇キロくらいの位置にあり、多くの観光客が訪れる観光地でもある。観光の目玉の一つが本渓水洞(本渓鍾乳洞)であり、四〜五百万年前に形成された巨大な流水鍾乳洞がこの入口の奥に拡がる。 |
本渓水洞(本渓鍾乳洞)洞内 地下水道は既に3000mくらいが「開発」され、観光客は一〇人乗りくらいの船に乗り三〇分程度かけて鍾乳洞内の水路をめぐる。万人坑や侵略の跡とは無関係と思いますが、本渓を訪れる人には本渓水洞の「観光」をお勧めします。 |
【李秉剛教授(北京)提供写真】
| 1942年の本渓湖炭鉱ガス爆発事故の生存者・尚宝徳さん 【李秉剛教授(北京)提供写真】
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本渓湖炭鉱ガス爆発事故の証人で生存労工の翟文華さん 【李秉剛教授(北京)提供写真】
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