南 京 江 東 門 万 人 坑

 南京江東門万人坑
江蘇省南京市

 南京大虐殺はあまりにも有名な事件なので詳しい説明は省略するが、中国では、日本軍が南京を占領した1937年12月13日から6週間で日本帝国主義下の日本兵が無辜の中国人民30万人を虐殺したとされている。
 この間、中国人民に対する大量殺害は南京城内外のいたるところで行なわれ、煤炭港・中山埠頭・草靴峡・燕子磯などから膨大な数の遺体が揚子江に捨てられ流されたほか、南京東郊外や上新河、中華門外の普徳寺、下関の挹江門などに数多くの万人坑(人捨て場)が残された。江東門万人坑もその一つだ。
 1937年12月16日の夕刻、元の陸軍監獄に一旦収容していた1万人余の一般住民と武装解除された中国軍兵士を日本軍は江東門へ連行し、そこで集団虐殺した。そのあと遺体は長い間放置されたが、気候がだんだん暖かくなり遺体が腐り始めるころ、江東門周辺に放置されていた1万体余の遺体を南京の慈善団体が集め周辺の数カ所に埋葬し、江東門万人坑が形成された。
 その江東門万人坑の地に南京大虐殺記念館が建設されている。そして、記念館の建設工事の際などに敷地内で発見された万人坑と犠牲者の遺骨が、記念館内に開設された犠牲者同胞遺骨陳列室・「万人坑」遺跡保存館・史料陳列ホール(展示館)などに保存され展示されている。
 
写真:2015年12月13日・14日撮影 

 南京大虐殺記念館・集会広場
 集会広場は、記念館東部に位置する展覧区に設営されている。写真は、2015年12月13日に挙行された南京大虐殺犠牲者国家追悼式に参列するため集会広場に整列した1万名余の人たち。左側の奥に見える建物は史料陳列ホール(展示館)。

 南京大虐殺記念館・墓地広場
 墓地広場は、記念館中央部に位置する遺跡区に設営されている。その広大な広場に敷き詰められた石は南京大虐殺の30万人の犠牲者を表わしている。左側手前の彫像は、家族を探し求める母をモデルとして制作された高さ4メートルの立体像で、「母の叫び」と名付けられている。

 南京大虐殺犠牲者追悼法要
 遺跡区の南西端に、1万人余の犠牲者の名前が記された「嘆きの壁」が設置されている。その「嘆きの壁」の前で、2015年12月13日に日中両国の僧侶により南京大虐殺犠牲者追悼法要「世界和平法会」が勤められた。黒の法衣を身に着けるのが日本の僧侶、橙色の法衣をまとうのが中国の僧侶。

 南京大虐殺記念館・平和公園
 平和公園は、記念館西部に位置する平和公園区に開設されている。長さ160メートルの池が配置された庭園の先(西方)に、「平和」と名付けられた高さ30メートルの母子像が設置されている。池の端を歩いているのは、南京大虐殺犠牲者国家追悼式を終え家路に向かう人たち。





 犠牲者同胞遺骨陳列室
 南京大虐殺記念館の中央部に位置する遺跡区の西端南側に犠牲者同胞遺骨陳列室が独立の建物として建設されている。外形が棺桶の形をしているこの陳列室には、1985年8月15日に竣工した最初の記念館の建設工事が進行中の1984年に敷地内で発見され収集された南京大虐殺犠牲者の遺骨が保管・展示されている。


 犠牲者同胞遺骨陳列室と「万人坑」遺跡保存館
 遺跡区墓地広場の西端に設置された彫像「母の叫び」の背後にある建物が犠牲者同胞遺骨陳列室。その北側(奥)にある一回り大きい建物は「万人坑」遺跡保存館。

 南京大虐殺犠牲者の遺骨−1
 犠牲者同胞遺骨陳列室に保管・展示されている南京大虐殺犠牲者の遺骨。

 南京大虐殺犠牲者の遺骨−2
 最初の記念館の建設工事中の1984年に発見された遺骨が集められている。

 南京大虐殺犠牲者の遺骨−3
 犠牲者の遺骨の前で、南京大虐殺を否定することは許されないと改めて思う。





 「万人坑」遺跡保存館
 南京大虐殺記念館の中央部に位置する遺跡区の西端南側に犠牲者同胞遺骨陳列室が建設されている。そのすぐ北側で芝生の管理をしていた記念館の職員が1998年4月30日に4体の遺骨を見つけたのがきっかけとなり、1999年12月までに170平方メートルの範囲で地中の遺骨が調査された。地中に埋められた遺骨は7層に重なり、表層で確認できる遺骨は208体になる。その中には、湾曲や変形が残る遺骨や、弾丸が貫通した傷跡や銃剣で刺した傷跡が生々しいものもある。頭蓋骨などに鉄の釘が打たれた遺骨もある。
 南京大学現代分析センターと南京鼓楼病院などによる詳しい調査により、これらの遺骨は60年前に埋められたものであることが確認され、虐殺されたあと慌ただしく埋葬された南京大虐殺犠牲者の遺骨であることが分かった。表層で確認できる208体のうち16体は成人女性の遺骨である。また、120体の遺骨の年齢が特定され、3歳から60歳まで分布していることが分かった。
 この万人坑をそのまま保存するため、発掘現場をそっくり覆う「万人坑」遺跡保存館が建設され、2007年の新記念館竣工時から現在の状態で一般に公開されている。


 南京江東門万人坑‐1
 「万人坑」遺跡保存館に保存されている南京大虐殺犠牲者の遺骨と万人坑。

 南京江東門万人坑‐2
 1998年から1999年にかけて発掘・調査された万人坑がそっくり保存されている。

 南京江東門万人坑‐3
 雑然と横たわる遺骨は7層に重なり、表層で208体の遺骨を確認できる。

 南京江東門万人坑‐4
 弾丸や銃剣の傷跡が生々しい遺骨や、湾曲や変形が残る遺骨がたくさんある。





 史料陳列ホール(展示館)内の万人坑
 2007年に竣工する新記念館の建設工事が進められていた2006年4月3日に、本館拡張工事の東側の工事現場で担当職員が遺骨を発見した。この遺骨を南京市公安局法医学センターの法医学者が鑑定し、南京大虐殺犠牲者の遺骨であることが確認された。江東門にある南京大虐殺記念館の敷地内で南京大虐殺犠牲者の遺骨が発見されるのは、1984年と1998年に次いで3度目になる。
 新たに発見された遺骨と万人坑の処置について記念館拡張工事指揮部が関連機関や専門家と相談した結果、この万人坑遺跡全体をそっくりそのまま別の場所に地面ごと移動して一旦保管し、新記念館が完成したあと新しい展示館内にそっくり移設し保存・展示することが決定された。
 2007年の新記念館竣工後は、その大工事を経て史料陳列ホールの建屋内に移設された万人坑遺跡を当時のままの状態で見ることができる。


 万人坑の発掘調査のようす
 2006年に発見された万人坑を発掘調査しているようす(展示写真)。この発掘現場が地面ごとそっくり史料陳列ホール(展示館)に移設された。

 展示館内に移設された万人坑‐1
 史料陳列ホール(展示館)で、移設された万人坑を大勢の観覧者が見ている。

 展示館内に移設された万人坑‐2
 南京大虐殺犠牲者の遺骨は何層にも重なっている。

 展示館内に移設された万人坑‐3
 南京市公安局法医学センターにより夫々の遺骨が詳細に調査・鑑定された。







「万人坑を知る旅」index

「 満 州 国 」 の 万 人 坑
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付 録 : 朝 鮮 を 知 る 旅
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付 録 : 日中友好新聞連載記事
        中国本土に現存する万人坑と強制労働現場を訪ねる



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