2016年の年頭に思うこと


1.民主的な法治国に日本を戻すため安倍自公政権を追放することが喫緊の課題

(1)集団的侵略権容認と戦争法強行で日本は法治国家ではなくなった

 2014年7月1日に「集団的自衛権」に基づく武力行使の容認を憲法を無視して閣議決定した安倍自公政権は、2015年9月19日未明に戦争法(「安保法制法」)を強行「採決」し、法として「成立」させました。最高法規の憲法に違反する法が成立するのであれば立憲主義は崩壊したということであり、日本はもはや法治国家とは言えません。安倍自公政権が憲法も法律も無視し不当に支配する独裁国家になったのです。
 戦争法は、11本の「安保関連法」を強引に2つにまとめた「法律」ですが、そのうち「国際平和支援法」は、特措法なしで自衛隊を常時海外派兵できるようにする海外派兵恒久化法であり、これまでは認められていなかった戦闘地域で「後方支援」(戦闘行為そのもの)することを任務に加える、二重の直接戦争参加を可能にする悪法です。
 戦争法のもう一つ「平和安全法制整備法」は、これまでは想定していなかった「治安維持活動」を任務に加え、任務遂行のための武器使用を認め、武器使用を伴なう非国連統括型活動への参加を容認しています。さらに、最も重大な問題は、アメリカが外国に侵略し戦争を始めたら日本がアメリカの侵略戦争に加担する集団的侵略権(「集団的自衛権」)を認めていることです。
 でたらめな理由をでっち上げてイラクやアフガニスタンを侵略し中東の現在の泥沼状態の元凶となり、ベトナム侵略戦争の記憶も鮮明なアメリカは世界最強かつ最悪の侵略国家です。経済(金儲け)のためなら、何とでも理由をでっちあげ武力侵略し、気に入らない他国を力でねじ伏せるアメリカの実像は多くの人が認識していることでしょう。そのアメリカが起こす侵略戦争に、アメリカの「ポチ(犬)」に成り下がった(「ポチ」にしてもらったことを喜ぶ)安倍晋三が率いる日本が積極的に加担するのです。世界の多くの人々と国々が、日本はアメリカの属国にすぎないことを改めて確認したでしょう。

(2)野党共闘を実現させ、自公候補を全て落選させよう
 民意を無視し憲法をも無視して独裁政治を強行できる安倍自公政権の力の源泉は何なのかと問うとき、その答は明白です。選挙で勝ったからというのが答です。
 安倍晋三と自民党・公明党は暴力革命や武力クーデターで政権を奪ったのではありません。選挙で多数の議席を占めて堂々と政権に就いたのです。だから、安倍自公政権の暴走の責任は私たち日本国民(有権者)にあります。他の国の人から見れば、私たち自身が独裁政治を許したのだと批判される立場にあるということです。前回の衆院選で虚構の勝利を自民党にもたらした小選挙区制という選挙制度が悪い(注1)のだと言い訳してみても、他の政党と比べれば自民党が最も多くの票を得たのは事実です。
 選挙が終わった後で、集団的侵略権(「集団的自衛権」)と戦争法(「安保法制法」)は許せないと訴えても、民主主義を否定する現在の安倍自公政権の下では何も変わりません。民意を無視し憲法をも蹂躙するのが自公政権です。では、どうすれば良いのか。答は一つしかありません。その答は、選挙で現野党が自公に勝つことです。
 次の参院選では、小選挙区では自公候補を一人たりとも当選させないというのを合言葉に野党共闘を実現させましょう。全ての小選挙区で野党統一候補を擁立できれば、全ての小選挙区で勝つことは可能だと思います(注2)。野党統一候補の公約は、集団的侵略権を容認した閣議決定を撤回することと戦争法を廃止することの二点だけで良いではないですか。小異は捨てなくてよいので大道に付くという大義名分で野党を団結させましょう。
 しかし、戦争法「成立」から3カ月以上も経っているのに野党共闘は実現していません。こういう中で、12月20日の記者会見(注3)で結成が発表された「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称=市民連合)の動きには大いに勇気づけられます。民主党内などにいる、野党団結に異を唱える一部の人たちにはみんなで圧力を加えましょう。そして、全ての小選挙区で野党統一候補を実現させ、自公候補全員を落選させ、安倍自公政権を追放しましょう。各野党間の小異を議論するのは、憲法違反の閣議決定を取り消し、戦争法を廃止し、日本を立憲主義の法治国家に戻してからで良いではないです。

(注1)前回(2014年末)の衆院選で安倍自民党は定数の61%(290議席)を獲得しました。しかし、投票者の意志を正しく示す比例区の得票率は33%でしかなく、自民党の比例区の議席占有率は38%です。ところが、小選挙区で75%もの議席をかすめ取り、これが虚構の「自民大勝」をもたらしました。ついでに補足すると、投票率は53%なので、全有権者に占める自民党の得票率は17%に過ぎず、6人のうち5人は自民党を支持していません。
(注2)前回(2014年末)の衆院選沖縄選挙区では、沖縄に新たな軍事基地は造らせないという沖縄の人たちの願いを託された統一候補4氏全員が勝ちました。公約を踏みにじり、辺野古軍事基地建設推進と言わされた自民党4候補は、沖縄の人たちから全員が拒否されたのです。
(注3)12月20日の記者会見に出席した5団体は、@立憲デモクラシーの会、A安全保障関連法に反対する学者の会、B安保関連法に反対するママの会、CSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動・シールズ)、D戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会



2.長良川河口ダム/長良川

   2015年12月15日に国連食糧農業機関が「清流長良川の鮎」を世界農業遺産に認定しました。鵜飼などの伝統漁法、美濃和紙などの文化や景観など流域住民の生活に恵をもたらす「里川」として高い評価を得たのです。しかし、手放しで喜んでよいのでしょうか。
 長良川河口ダム(堰)で分断され流れを止められた長良川の生態系はズタズタで瀕死の重傷です。世界農業遺産として恥ずかしくない長良川に、あるいはふさわしい長良川に戻そうとするなら、河口ダムを撤去し本来の自然環境を回復させるしかありません。ダムの撤去だと言うと大変なことだと考える人が多いと思いますが、長良川河口ダムは開閉式の「ゲート構造」で造られているので、実際には「ゲート」を開けるだけでよいのです。
 いつでもすぐにでもできる「ゲート」開放を土建官僚が拒否する理由は、長良川河口ダムの存在が土建官僚の「オイシイ生活」の源泉であるからです。河口ダム本体とそこから派生する膨大な土建工事と関連事業という巨大な利権を餌にし、そこに群らがる土建企業を養ない、そして高給で天下るのが土建官僚の「オイシイ生活」の正体です。
 長良川河口ダムに反対する市民団体の一つ「長良川河口堰建設に反対する会」は、2015年も長良川中流域の粥川で「長良川DAY」を開催しました。高い岩場から長良川本流に飛び込み、ラフトで長良川本流を下り、自然の宝庫の粥川でオオサンショウウオを探し、魚を釣り(漁り)、夜はキャンプで語り明かしました。
 長良川本流と支流の粥川で遊びほうけ本来の自然を体験した子どもたちは、自然の不思議さと楽しさに気づき、やがて土建官僚の嘘を見抜き、河口ダムを撤去し自然環境を守る闘いに馳せ参じてくれるでしょう。その日が楽しみです。


3.二風谷ダム・平取ダム/沙流川

 沙流川本流を分断する二風谷ダムの上流部に合流する沙流川支流の額平川で平取ダムの建設が今進行中です。その平取ダムは、はるか昔の日本の高度経済成長時代に、苫東(苫小牧東部大規模工業基地)に工業用水を供給するため二風谷ダムと併せて計画されたダムです。しかし、苫東に工場は集まらず、やがて高度経済成長時代は終焉し、苫東に工業用水は不要になりました。
 そういう状況に変化したのに土建官僚が建設を強行した二風谷ダムは、ダム建設で農地を奪われた地元の二風谷のアイヌが起こした裁判で違法と断定され、判決は確定しています。しかし、裁判が終了する前に土建官僚がダムを造ってしまったので、今さら取り壊すのも大変だという理由で「事情判決」ということにされたので、違法の二風谷ダムが取り壊されずに残っているだけです。当然のことだと言うのも変ですが、二風谷ダムからは一滴の水も苫東に供給されていません。そして、二風谷ダム建設で破壊されたアイヌの聖地と文化と暮らしは元に戻ることはありません。
 そういう事実を無視し、アイヌ民族の暮らしと歴史や文化や史跡や聖地を破壊する亡霊のような平取ダムの建設を21世紀の今になって強行する土建官僚の腹黒さにはあきれるしかありません。
 土建官僚がダム建設などの大規模土建工事をでっち上げ強行するのは、官僚組織の維持と自身の保身を図りつつ土建工事に群がる土建企業を養い儲けさせ、そこに高給で天下るためだけです。この癒着構造の本質のところで土建官僚を追い詰めないと、有害かつ無駄な「公共」事業はなくなりません。
 2015年9月に、今建設工事が進行中の平取ダムを現地で確認しました。ダム建設現場では、額平川の両岸にそびえ立つ山を連結させるダム堤体を構築するため、額平川の流れを迂回させる導水路が必要になります。その導水路を通すため、自然の河床より10メートルほども深いところまで河床を掘り下げていました。その底から見上げるダム建設現場は、自然を冒とくするように巨大で威圧的です。また、ダム湖で水没する地域より標高が高い位置に新しい道路や橋が建設されつつありますが、水没予定地から見上げるはるか上空を、まるで飛行機雲のように伸びる道路や橋は、巨額の税金の無駄使いという以外に表現のしようがありません。
 平取ダム建設という理不尽にも新たに向き合わされながら、二風谷ダム建設でアイヌの聖地と暮らしを破壊された二風谷と沙流川流域の人たちは、沙流川を分断・破壊されたまま20年目の新年を迎えます。


4.中国の旅/南京

 2014年2月27日の全国人民代表大会(全人代)常務委員会で中国は次の二つのことを決めました。
1.9月3日を中国人民抗日戦争勝利記念日と明確に定める。毎年9月3日に国は記念行事を行なう。
2.12月13日を南京大虐殺犠牲者国家追悼日と定める。毎年12月13日に国は公式追悼行事を行ない、南京大虐殺犠牲者および日本帝国主義の中国侵略戦争の期間に日本の侵略者に殺戮された全ての犠牲者に哀悼の意を捧げる。
 戦後70年にもなろうという今になってこのようなことを決めた直接の原因は、極右で歴史改竄主義者の安倍晋三が首相として君臨し、侵略戦争を再び実行する体制作りを着々と進める日本の現実にあるのでしょう。かつて、日本の侵略で筆舌に尽くし難い甚大な被害を受けた中国が肌で感じる危機感は生半可なものではないのでしょう。
 2014年2月の全人代常務委員会の決定に従い、2015年9月3日の抗日戦争勝利記念日に北京で、大規模な軍事パレードと閲兵式が習近平主席が出席して実施されました。軍事パレードと閲兵式は10年に1度、建国記念日(10月1日)に行なわれてきたので、次回は2019年の建国記念日だと思っていました。それが4年も繰り上げられ、初めて9月3日に実施されたのです。
 こうなると、2015年12月13日の南京大虐殺犠牲者国家追悼日の公式行事はどのように行なわれるのか知りたくなり、それを確認するため初冬の南京を訪ねました。そして迎えた12月13日、全人代常務委員会の李建国副委員長が犠牲者追悼式典に出席し、南京大虐殺記念館の集会広場に集まった一万人余の参列者の前で中央政府を代表して演説しました。その中で李建国副委員長は、「南京大虐殺は歴史の定説だ」と指摘し、歴史事実を改竄し侵略責任を認めない日本を名指しで批判しました。
 追悼式典は、敷地面積が以前の施設の3倍以上に拡張され2007年に竣工したばかりの南京大虐殺記念館で行なわれましたが、その隣に、2015年に竣工・開館予定の新記念館がさらに建設され、間もなく開館を迎えようというところでした。その開館直前の新記念館も見学しましたが、「対ファシズム戦争勝利」というのが新記念館の展示主題です。
 また、南京市内の利済巷にある日本軍慰安所跡に現存する慰安所施設を利用し、日本軍性奴隷問題を問う利済巷慰安所旧跡陳列館が整備され、12月1日に開館しています。その、開館したばかりの利済巷慰安所旧跡陳列館も見学することができました。日本軍性奴隷(「慰安婦」)問題に関わる記念館は中国・韓国・日本などたくさんの国に開設されていますが、利済巷慰安所旧跡陳列館はその中で最大規模の展示施設です。
 このように、日本の侵略で受けた惨禍を中国の人たちは決して忘れません。そういう中で日本がすべきことは、侵略加害の事実を認め心から謝罪し、できる限りの賠償をすることです。そして、二度と侵略の罪を犯さないことを決意し、誠実な行動を重ね続けることです。その態度が真摯なものであることが理解されれば、中国の人たちは事実は忘れませんが許してくれるでしょう。そして真の友人になることができるでしょう。


5.本の紹介

 2014年末の衆院選に勝ち、4年間の「フリーハンド」を得たと誤解している安倍自公政権が、侵略戦争を実行する国に日本を再び変えようとすることがどれほど愚かなことなのかを理解するには、歴史事実を直視し侵略の実態を知ることが不可欠です。そのため、(手前味噌で恐縮ですが)拙著を改めて紹介させていただくことの必要性が、参院選を控える今一層強まっていると思います。ここで紹介する本(青木茂著)は全国のどの書店でも購入できますので、ぜひ手に取って御覧いただければと思います。お届け先を当方に連絡いただけば、送料不要で郵送にてお届けすることもできます。御一報ください。

『日本の中国侵略の現場を歩く/撫順・南京・ソ満国境の旅』
 2015年は戦後70年。その「節目の年」を前に私が知りたいと思ったことは、日本の侵略で筆舌に尽くし難い惨禍を受けた中国が戦後70年をどのように迎えようとしているのかということです。そのため、中国各地の町や村を訪ね、惨劇の現場を確認し、被害者や遺族から話を聞きました。こうして訪ね歩いた現場のうち、撫順と南京とソ満国境の三カ所を取り上げ、戦後70年を迎えようとしている夫々の情況を本書で紹介しています。
 本書で示した事実を基に中国の現状をまとめると、日本の侵略で受けた惨禍に対する被害者の心の傷は癒えておらず、強烈な怒りと不信感を日本に対し持っていると言えるでしょう。しかし、中国が問題視しているのは安倍首相など極右・靖国派の「指導者」であり、日本全体を批判しているのではないということが重要です。この情況を理解すれば、今、最悪の状態にある日中関係を改善する希望と確信を私たちは持つことができます。
2015年7月15日発売
発行‐花伝社 / 発売‐共栄書房
定価‐1700円+税

『万人坑を訪ねる/満州国の万人坑と中国人強制連行』
 日本の民間企業は、日本の敗戦で終結した15年戦争(日本の侵略戦争)の期間中に、「満州国」内だけでも1600万人の中国人を炭鉱などの鉱山や土建工事などで強制労働させ、莫大な利益を手に入れました。このとき中国人被害者に強いられた強制労働の実態は言葉で表現できないほど過酷かつ残忍で、強制労働被害者の8割とか9割もが死亡した現場もたくさんあります。
 強制労働で死亡した膨大な数の中国人被害者の死体を捨てた現場は中国のいたるところに今も現存していますが、その巨大な「人捨て場」を中国の人たちは万人坑と呼んでいます。このような侵略の実態を本書で確認していただければと思います。
2013年12月10日発売
発行‐緑風出版
定価‐2500円+税